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女子ジュニアサッカー選手の食事における問題点

栄養管理は、アスリートのトレーニングにおいて重要な構成要素の1つである。ただ残念なことに、これが選手のトレーニングの一環であるということが、度々見過ごされてしまうことがある。

 

これまで、男性のユースプレーヤーとプロ選手の栄養管理に関しては十分に研究がされてきた。しかしながら、女性アスリートに焦点を当てた研究はほとんどされていない。女性アスリートは、男性と比較すると栄養管理においても独特の側面がある。骨格の発達のためにカルシウムとビタミンDの摂取の必要性がある一方で、鉄分不足の危険性の増加、体重が増えてしまわないように気遣う社会的なプレッシャーなどは、彼女達の食事の選択に影響を与えてしまう。最近の研究結果をまとめた「International Journal of Sports Nutrition and Excercise Metabolism」 では、男性のプレーヤと同じように、女性プレーヤーの食事で栄養素が欠乏していることは、ピッチでのパフォーマンスに健康にも影響を与えていることがわかった。

ある研究が、カナダのブリティッシュコロンビアにあるVictoria大学の教授によって行われた。それは、カナダのトップレベルにあるジュニア女子プレイヤーに焦点をあてたものであり、対象選手の年齢は14歳~17歳、週平均で12時間の練習をしている選手たちである。

研究員達は、4日間(2日/練習日、1日/試合日、1日/休み)の食事を記録することを依頼した。全ての選手とその両親は事前にセミナーに参加して、どれ位の量と何を食べたのかを正確に記録できるように学んだ。そして、記録した食事に関しては、研究員たちが、ビタミン、ミネラルとトータル摂取カロリーを測り、その内容が分析された。研究員達はまた、集計日の選手たちの活動消費カロリーも計測した。

結果は、とても興味深いものであった。食べ物や飲み物からの摂取カロリーは、1日2000カロリーを少し超える程度であった。これは、消費カロリーの平均1日2546カロリーよりも少ない。これは、選手がトレーニングや他の日々の活動の必要なカロリーを十分に摂取していないことになり、選手たちは、1日500カロリー以上不足している計算になる。研究対象の選手たちは、決してウェイトオーバーでも、痩せすぎているわけでもない。それため、この研究期間で記録されたカロリー不足は、おそらく別の日に摂取することで体重維持をしているのだろう。しかしながら、長い視点でみれば、日々のカロリー不足(特に痩せた人にとって)を、是正しなければならないし、結果的にはパフォーマンスに影響を与える。

細かく見ると、50%以上の選手が、女性アスリートに推奨されている糖質(炭水化物)の量に満たなかった。繊維質に関しては、推奨されている量の1/4程度であった。幸いなことに、脂質とたんぱく質の摂取量の推奨された量の範囲内であったが、何人かのプレーヤーはたんぱく質の摂取量が少なく、脂質の摂取量が多すぎた。この結果から、カロリー不足の原因は、糖質(炭水化物)の十分な摂取が出来ていない結果だと言える。

ビタミンとミネラルに関しては、誰1人としてビタミンDとビタミンEの摂取量が推奨量に達していなかった。葉酸とカルシウムに関しても、推奨される量の1/3と顕著に低い数字であった。亜鉛マグネシウム、ビタミンAが不足している選手も何人か見られたが、一方で、ビタミンBと鉄分、銅は大半の選手が推奨量を超えていた。

この研究の著者が結論付けたこととしては、女性プレーヤーの食事は、適切な成長を促すことと試合のパフォーマンスを引き上げるのに、必要な栄養が不足しているということであった。パフォーマンスという面では、摂取カロリーが消費カロリーに達していないということと、炭水化物の不足が筋肉のグリコーゲンのレベルを引き下げてしまっている可能性があることだろう。グリコーゲンの不足は、ダイレクトにパフォーマンスレベルに影響を与える。これは、特に試合の後半やトレーニングの終盤にその影響が顕著に現われる。

懸念するもう1つの点は、カルシウムとビタミンDの不足は骨の成長に影響を与える点である。これらの2つの栄養素は、適切な骨の成長に不可欠なものである。これらの不十分な摂取は、骨の強度が弱くなり疲労骨折を誘発しやすくなる。また、ビタミンEは、抗酸化作用に優れ、細胞の修復に不可欠なものである。

では、この研究で出た問題点を正すにはどうすれば良いのか?これらの問題に対処する最適な方法は、十分な炭水化物、ビタミン、ミネラルを摂取できる最適な食事に焦点をあてることだろう。脂肪の少ない肉類、新鮮な果物と野菜と同様に、全流穀物のパンやパスタを取ることが良い方法である。マルチビタミンサプリメントも日々のビタミンやミネラルの摂取には役立つだろう。しかし、適切な食事からでも、これらの栄養素は摂取が可能である。

研究員たちは、アスリートは健全な食生活の重要性、特にサッカーの競技特性に見合った食事をしっかりと教えられるべきだと示している。コーチたちは、どんなものをどのタイミングで食べたらよいか選手たちが理解しているかを、たびたび確認するとよいだろう。しかし、教えることが全てになってはならない。なぜなら、食事とパフォーマンスは密接に関連しており、選手たちは自発的に日々の食生活を見る必要があるからである。選手たちは、どのタイプの食事をとったら、どうピッチのパフォーマンスに影響があるかを比較する必要がある。食事がパフォーマンスへ影響があることを理解することで、選手は賢く、健康的な栄養摂取の選択をするようになるだろう。そして、アスリートとしてパフォーマンスを引き上げる食習慣の取り込みは、また健康的な生活を長く送るという点でもより良い食習慣となるだろう。(了)

 

Reference

Gibson JC, Stuart-Hill L, Martin S, Gaul C (2011) Nutritional status of junior elite Canadian female soccer athletes. International Journal of Sports Nutrition and Exercise Metabolism. 21: 507-514.

 Reference: The Diets of Female Players Are Also Left Wanting

ホフテストってなに?

フィジカル能力とテクニックは非常に優れた選手の2つの大きな特徴である。これら2つの能力は決して独立したものではなく、密接にリンクしている。

 

選手の有酸素能力やフィットネスレベルは、試合における選手のテクニック的なパフォーマンスに大きな影響を与える。研究ではフィットネスの優れたプレーヤーがテクニック的にも優れていることが示されている。特に、試合の後半ではそれがより顕著になってくる。ここからも、コーチは常に両方の能力も伸ばす方法を模索している。現在は、選べるだけの多くのドリルや練習メニューがある。これらは、長い距離のランニング・インターバルトレーニングからドリブルやリフティングのような特定のテクニックのトレーニングまで幅広い。練習時間を最適なものにするために、サッカーのスキルトレーニングの中に高いフィジカル強度を取り込んだものは、優れたトレーニングであると言える。

数年前に、ノルウェー科学技術大学のドクター、ヤン・ホフが持久力トレーニングにサッカーのスキルを取り入れたプログラムを開発した。それは、ホフ・テストもしくはサーキットと呼ばれ、走る方向の変化やボールリフティング、ドリブルなどを含んだものである。ホフ・テストはフィットネス向上の定期的なトレーニングとしてこの練習が取り入れることができると示された。

ホフ・サーキットは時々ホフ・テストともホフ・トラックとも言われる。一般的なプログラムは下の図を参考にしてもらいたい。選手は、ドリブルでコーンを通ったり、30cmの高さのバーの上を通ったりする。そして、選手は次のコーンに移動する。A地点とB地点の間で、選手はボールコントロールしながらターンや後方へのドリブルを行う。コースのレイアウトにもよるが、正確に測れば総距離は290m程度になるだろう。

トレーニングとして、4セット行う。4セットはそれぞれ各4分間、その間のインターバルは3分で、インターバル中は軽いジョギングを行う。つまり4分×4(トレーニング)+3分×3(インターバル)で25分のトレーニングとなる。理想としては、選手は最大心拍数の90~95%程度の運動強度でトレーニングしてもらいたい。しかし、強度は選手の特定の状況、フィットネスレベル、テクニックレベルに応じて変化させることもできる。他のインターバルトレーニングと同様に、トレーニングやインターバルの長さなどを変えることも可能である。

研究者たちは、若くて経験豊かな選手たちでホフ・テストの効果を評価した。彼らは、ホフ・テストがスモールサイドゲームやインターバル走と同様に、エネルギー消費を引き出すことがわかった。これは、フィットネストレーニングの方法として1つの方法となる。トレーニングを取り入れて数週間後、フィットネス面での上昇では、最大酸素摂取量の面で他のトレーニングにも匹敵していた。例えば、セルティックフットボールクラブのドクター、マクミランは17歳のプロフェッショナル選手にホフ・テストを採用していた。彼は、選手たちに通常の練習が終わった後に、週2回定期的にホフ・テストを行うように指示した。そして、10週間後には最大酸素摂取量が9%アップしていた。

また、ホフ・テストでは、選手は特定時間内にできるだけ多くのサーキットが完了するように求められる。成功するためには、選手はフィットネスとボールコントロールの両方が求められる。練習では、それぞれの目標は、選手の年齢、能力、フィットネスレベルなどによって変化させるべきだろう。いずれにしても、このテストは選手のボールコントロールとフィットネスの両方を見るには効果的であるといえる。

ホフ・テストの目的はフィットネスとボールコントロールの向上であるが、サッカーの試合でのスキルやパフォーマンスに直接的な影響があるのかを誰も指摘していないことは重要な論点である。つまり、試合に役立つテクニックが得られているのかを示す研究はまだない。しかしながら、持久力トレーニングは試合のパフォーマンスを高め、ホフ・テストは持久力を高める。これに基づけば、理論的にはホフ・テストは試合のパフォーマンスとスキルを向上させることになる。とくにホフ・テストはボールを扱いながらフィットネストレーニングができるという点においても良い言えるだろう。

研究者は、ホフ・テストは選手のフィットネスの向上や持久力測定のために非常に使いやすいと評価している。このプログラムの利点は、選手の成功に関わるさまざまな要素を含んでいることである。-フィットネス、ボールコントロール、ターンの能力など。また、定期的な練習メニューにとても簡単に組み込むことができることも大きな点だろう。(了)

 

【ホフテスト基本概要】※選手の年齢、能力、フィットネス条件などにより異なる

・4分×4セット→最大心拍数の90~95%程度の目安で

・インターバルは3分間ジョギング→最大心拍数の60~70%程度  合計25分間

練習方法※ボールは常に保持する

・コーン7~コーン8までは、後ろ走りでのドリブル

・3つのハードル(30cm~35cm)、22個のコーンが必要

・3つ目のハードルから1つ目のコーンは30.5mで、各コーン同士の距離は25.5m

・ハードルは飛び越える

 

References

Chamari K, Hachana Y, Kaouech F, Jeddi R, Moussa-Chamari I, Wisløff U. (2005) Endurance training and testing with the ball in young elite soccer players.
British Journal of Sports Medicine, 39:24-28.

McMillan K, Helgerud J, Grant SJ, Newell J, Wilson J, Macdonald R, Hoff J. (2005) Lactate threshold responses to a season of professional British youth soccer. British Journal of Sports Medicine, 39:432-436.

Hoff J, Wisløff U, Engen LC, Kemi OJ, Helgerud J. (2002) Soccer specific aerobic endurance training. British Journal of Sports Medicine, 36:218-221.

モウリーニョ、10の言葉

一流監督は彼ら独自の視点でものを見ていますよね。今回のコラムでは「よい守備」とは、「モチベーション」に関してなどモウリーニョの考えが詰まった10の言葉を紹介します。

 

 

 

1.   チームの中でのスターはチームだけだ
 

「私にとって一番の関心はチームにあり、選手達の組織的な動きにある。私には個々の選手の身体能力、精神力そして戦術理解力の各要素の重要性の差というのは全くわからない。しかしサッカーはそういった能力を全て要求している。結局私にとってはこれらは切り離すことの出来ないものなのだ。身体的な力は全てではなく、サッカーではそれ以上のこと求められる。もしかすると他の要素と比べれば実は身体能力とは一番小さな要素なのかもしれない。どれだけ身体能力があっても、しっかりした組織と様々なプレーモデルに対応できる個の才能が無い限り、各選手の弱点はすぐに表に出てしまう。」

                  

 

2.   戦術的なトレーニングは初日から

 

サッカーにおいて一番大事なことはチームとしてのプレースタイル(プレーモデル)を持つことである。それがグループとしての動きを形作る。だからこそチーム戦術には初日から取り組む。これこそレアル・マドリードが必要としていることなのだ。

 

 

3.   フィジカルサーキット無し、ジムトレーニング無し、グランド周りのランニング無し  

 

 「ピアニストが巨匠の作品に取りかかる前に、ピアノの周りを走り回っている姿など見た事が無いだろう?同様に私のメソッドでも選手にグランドをぐるぐる走らせることは無い。」

またモウリーニョと彼の右腕とも言える、フィジカルトレーナーのルイ・ファリアにとってはフィットネスジムとは怪我のリハビリのための施設でしかない。
 

 

4.   ボールは絶対必要だ。練習時間は最長90分


 「私のトレーニングは決して長くはない。その内容はダイナミックであり、かつとても効率が良いものだ。私の選手たちにはボールコントロールをすることを特に好きになって欲しい。そしてボールを相手から取った後に何をするべきかを学んで欲しい。

3時間ものトレーニングなど、選手を飽きさせるだけだ。そんなことをしていたら、すぐに選手はボールが好きでなくなってしまう。」

 

 

5.   シーズン中にコンディションのピークの時期は無い   

 

「週ごとのトレーニングサイクルは純粋に次の試合をフォーカスしデザインしている。私はシーズンのある1部分、例えば12月や5月などにピークを迎えるようなプラン作りはしないし、強豪チームとの試合のために特別に調子を上げるようなこともない。」

 

 

6.  試合の重要さではなく、普段のアプローチがモチベーションを決める
 

モウリーニョFCポルトを指揮していた時代、国内で全てを勝ち獲ってしまい、選手のモチベーションは国外タイトルへの挑戦以外では上がらないのではないかと危惧されたことがあった。そんな時期を乗り越えたモウリーニョはこう語った。

「4-3-3フォーメーションではピッチ上のスペースは自然に埋められている。このフォーメーションでは選手達にはある程度のクレバーさしか要求されていない、要は多くを考える必要が無いのである。一方4-4-2だとスペースの空き方にムラが有り、最初からフリーという選手は現れない、そのため選手たちにはよりサッカーを考えることが要求される。

日常的に戦術的規律を要求することこそが選手のモチベーションとなる、試合の大小など関係ない。」

 

 

7.  相手チームの分析は突き詰めて行う、しかしチームの戦い方は相手によって変わるものではない。
 

「相手チームを分析し、試合当日の出方の推測はする。そしてそれに基づいて、特定の選手を相手の配置もする。しかしそのような調整はポジション配置に関わるところまでである。相手の分析結果が我々のプレーモデルに影響を与えることはないし、システムを変えることも無い。」

 

 

8.  クリエイティブな選手たちは真っ先に守備に回る
 

「私にとってのよい守備とは、できるだけ少ない時間チームが守備に回ることである。そしてできるだけ長い時間、我々の最もクリエイティブな選手がボールを持っていることでもある。主導権を握る時間が長ければ長いほど、守りの動きをする必要性は減る。

ただチームが守備に回らないといけなくなったときには、全選手がそれぞれの役割を果たす必要がある。クリエイティブな攻撃的選手は守備の義務から外すべきだ、などという人がいるが、その人たちはサッカーを何もわかっていない。選手全員、ボールを持っているとき、持っていない時のそれぞれの時間帯に何をするべきかを理解しなければならない。

クリスチアーノ・ロナウドよ、君にもこれはあてはまる。」


 

9.  試合中から「回復」が始まる

「私のチームでは試合翌日は選手にオフを与えたいと思っている。これは身体的な面から見るとベストな判断とは言えないかもしれない。しかし重要な精神的回復を促すことができる。それでも、過密なスケジュールで試合が組まれる現状では、実際にはなかなか試合翌日に休みを与えられない。

このため、変に思うかもしれないが選手達は試合中から回復をスタートさせなくてはならない。もし私の思うとおりにチームがパフォーマンス出来れば試合の主導権を完全に握ることができ、試合中に精神的な回復を始められることだろう。試合終了時、精神的に疲れきっていることなく、もう1試合プレーしたいぐらいの気持ちになっているはずである。」

 

 

10.育成年代からトップチームまで全年代が同じメソッドを採用するべきだ。  
 

「クラブが採用しているトレーニングメソッドの哲学はトップから下部組織まで全てのチームで浸透していなければならない。FCポルト時代、私は定期的にユース統括者やリザーブチーム責任者とミーティングを行い、それぞれのチームがどのようにプレーするべきかを説明していた。このようにすることで、クラブ内で選手が上のカテゴリーに入ってもどのようなプレーが求められているか戸惑う心配が無い。すでにその理解は選手の中に馴染んでいるのだ。」

  Reference: Mourinho's 10 Commandments

 

オーバーコーチングを避けよう

今回のテーマは若く熱心なコーチほどはまってしまいがちなオーバーコーチング(教えすぎ)。ぜひ以下のガイドを参考に選手達への声のかけ方を考えてもらいたい。

 

 

コーチから選手への適切なアプローチの仕方を見つけよう

サッカーコーチである以上、チーム内やグランド上で様々な課題を常に見つけているはずだ。そしてその課題に対して「どのように取り組むか」こそがそのチームの色を生みだすこととなる。

もちろん毎回のトレーニングではコーチは常によい姿勢でさらに効率的に行わなければならい、けれどももしそこでオーバーコーチングが行われると、選手にとってコーチが威圧的に感じられてしまう。それにトレーニング自体がコーチのためのものになりかねない。

教えすぎない、適切なアプローチで選手に接することは、選手達がサッカーに集中でき、日々スキルを磨く支えとなることだろう。

 

 

絶対――!

練習中に子供達に対して「絶対――するな」といういい方は選手の成長へのサポートにはならない。

例えば「絶対自分のゴール前を横切るようなパスは出すな」という指示を子供たちにするとしよう。きっと子供たちは「なんでだめなの?」と思い、聞きに来るかもしれない。そのときに「相手チームがボールをとって結局失点してしまうかもしれないじゃないか」と返答するのではないだろうか。

しかしこういった「絶対――するな」というは、実は絶対にいつも正しいわけではない。もしそのパスが素晴らしいパスであれば失点などにはつながらない。これこそがオーバーコーチング(教えすぎ)の一場面であり、子供たちからプレーする楽しみを奪いかねないだろう。

この例で挙げた場面では、ゴール前を横切るパスがいい判断かどうかを本人に尋ねてみるのはどうだろうか。そしてもしその答えが「いや、良くないと思う」というものなら「なぜ違うんだろう?」とさらに聞いてみよう。

 

 

コーチが選手達を萎縮させてはいけない

ジュニアサッカーの試合でコーチの大声のせいで、選手が萎縮してしまっている場面をみたことがないだろうか。このような状況では選手は自分の能力以下のパフェーマンスしか出せない。こういうことが続くと、長期的に見てその選手がのびのびと成長していくことは出来ないだろう。

このような状況はまるで全ての状況判断をしているコーチ自身が、選手に代わってをプレーしているようである。

 

 

ピッチサイドからのオーバーコーチン

試合中に勝利へのプレッシャーあると、コーチや保護者が選手へのオーバーコーチングをしてしまいがちだ。ベンチやスタンドからのとめどない指示が飛び、悲しいことに往々にしてそれらの支持は矛盾している。

保護者が1人のバックの選手に対して「相手ペナルティエリアまであがれ!」といっている横でコーチははっきりと「自分のポジションを守れ」と指示を出していたりする。こんな状況では子供たちはどのように「状況判断」ができるというのだろうか。

 



オーバコーチングの産物

オーバーコーチングが行われてしまっている環境では小さな選手だと泣き出してしまったり、判断できず混乱したり、結局チームを辞めてしまったりする場合もある。

 

私のチームが実際にオーバーコーチングされているチームとの試合をしたときの光景はちょっと悲しいものだった。相手チーム選手は大人たちの産み出したプレッシャーに押し込まれ、創造性やゲーム理解力を失ってしまっていた。

 

 

子供たちからのサイン

子供たちのしぐさやボディーラングエージがコーチがオーバーコーチングしているかどうかの大きなヒントだ。

たとえば選手が不安そうだったり、神経質になっていたり、また始終コーチの指示を待っているような状況、そして判断を間違えることを不安がったり、それを指摘されるのが怖くて質問できなさそうな時・・・。練習を休みがちになった場合や、試合前に「控えがいいです」ということがあった場合は、自身のアプローチの仕方をを振り返ってみるべきだろう。(了)

 Reference: How to avoid soccer coaching pitfalls

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サッカーにおける戦術の変化 ~セントラルMF編(守備的MF編)~

セントラルMFはチームのエンジンと言える。もし、チームがこの中盤のエリアをコントロールできれば、ゲームで起こることを支配して統率することとなるだろう。良いチームは、必ずこのポジションにワールドクラスのプレイヤーを抱えている。これらの選手は度々、チームのエンジンであったり、オーケストラの指揮者などと表現される。

 

  • セントラルMFはスタミナが求められる。それは、自陣のボックス(ペナルティエリア)から相手ボックスまで、ボールに対して、攻撃に守備に限りなく走り回ることを意味する。
  • ボール奪取で勝つためにタックルが優れていること、そして前線に対してチャンスを創造するパスのスキルが必要になる。
  • チームで一番速い選手である必要はないものの、ルーズボールを拾いチャレンジできるための、パワーやスピードは必要になる。
  • 幅の広いサッカースキル、ヘディングやボールコントロール、パス、タックル、シュートなどの全てのスキルが求められる。
  • セントラルMFは、まれに競争的でリーダー資質を持っている。そして、コミュニケーションスキルとゲーム展開を読む力もとても役に立つだろう。

セントラルMFは、センターバックの前にポジションを取り、真ん中のディフェンスを形成する中盤のスペシャリストということになる。メインの役割としては、相手FWに入るボールに対してインターセプトを狙い、ブロックをしようとすることでセンターバックの盾となることである。MFとDFの間の穴を守ることで、ボールを奪取したりインターセプトした時にシンプルにアタッキングMFにつなぐことである。これは、あまり魅力的な役割ではないかもしれない。しかし、チームにとってはとてつもなく重要である。

ディディエ・デシャンは、1998年ワールドカップ優勝のフランスのキャプテンであるが、まさにこの典型の選手であった。かつて、エリック・カントナから嘲笑的な意味をこめて「水を運ぶ人」と表現され、デシャンはただ単に「より才能のある」選手にボールを預けるために存在しているだけと揶揄された。

また、ジョゼ・モウリーニョのクラウディオ・マケレレに対しての指導はいたってシンプルであった。チェルシーが中盤もしくは前線で攻撃になったときには、「絶対にボールより前に行くな」と言われていた。

セントラルMFの役割は、前のMFやサイドのMFが前線に出るための基盤を整えることである。そのため、フィニッシュの精度やスキルでチームに貢献に関しては、より前線のアタッキングMFに任せることになる。(了)

 Reference: Tactical Changes in Soccer Players Positions Part 2

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サッカーにおける戦術の変化 ~センターバック編~

の15年~20年の間にサッカーは戦術的に大きく変化した。 プレイヤーは固定したポジションを持つことは少なくなり、専門のポジションでプレーできるプレイヤーもよりオールラウンドな能力が求められるようになった。しかしながら、柔軟性があり、効率的であるためにピッチ上では依然としてそれぞれ異なる役割が存在する。

 

サッカーコーチは、プレイヤーが各々のポジションからゲーム中に外れた時にも、そこでも役割を全うできるように、選手たちによりオールラウンドなプレーを求める必要がある。

センターバック

センターバックは試合中の90%もの間、ボールと多くのフィールドプレーヤーたちが自分の前方にいることになる。これにより、センターバックはゲームを読むこと、何が起きているかを把握することができる独自の機会を持てることになる。そのため、センターバックはチーム内で意思疎通やまとめ役、リーダーなどになる傾向がある。

  • センターバックの第一優先は、ゴールを守ること
  • フィジカルが強く、タックルが上手く、空中戦においても強いこと
  • センターバックは、相手FWに対して対人能力で強こと
  • センターバックは、どこから危険なシーンが生まれそうか、ゲームを読む能力があること
  • センターバックの役割に忠実であり、自分の仕事に集中できること
  • 集中力が高いこと、1秒たりともセンターバックは集中を切らさないこと-あらゆる角度から失点の機会はある
  • スピードと走力があること
  • たびたび相手チームはセンターバックがボールを保持してもプレスに行かないことがある。-そのため、ボールコントロールと長い距離のパスができる能力があること

加えて、現代のセンターバックにはボールのあるなしに関わらず前方にポジションを移し、MFの位置で組み立てるよう、MFとしてのスキルも求められている。(了)

ミニゲームのコートの大きさにこだわっていますか?

どんなコーチだって普段からSSG(Small Sided Games=少人数制のゲーム形式練習)を練習に取り入れているはずだ。

 

もちろん、戦術理解力、技術力と同時にフィットネスレベル、つまり体力強化も図っていることだろう。ルールの設定やプレー人数の違いで数多くのSSGのバリエーションを作ることができるが、単純にピッチの大きさの設定も大変重要な要素となる。

最近発表された(訳注:記事の投稿された2010年12月2日現在)バスク州大学のある研究結果は、ピッチサイズの違いから「体力」、「テクニック」のそれぞれの分野の向上をより強調できることを示しいていた。

 

この研究では16歳の男子サッカー選手10人が5人vs 5人(+GK一人ずつ)を3つの大きさの異なるコートでプレーさせた。大コートはフルサイズの半面より一回り小さいほどの62x44m、そして中ピッチではフルコートの4分の1ほどである50x35m、小ピッチは23x23mだった。1試合8分間でコーチからの声かけは無しとし、各選手は心拍数測定器とGPS発信器を装着してプレーした。またタックル、ドリブル、パスなどの技術的な側面の解析を行うため、全てのゲームはビデオ撮影された。


まず運動強度、ピッチの大きさにより違いを示した。大ピッチでの計測結果は他より少し高い心拍数を示し、選手たちはプレー時間の50%を最大心拍数の90%で運動をしていた。小ピッチでの同様のプレー時間は41%のみであった。

そして大ピッチでは各選手は1000mの距離を移動しているのに対し、小ピッチでは、700mに留まっている。また選手たちは大ピッチで小ピッチに比べ、より多くのダッシュを行っていた。(6回vs1回)。

ここからより大きなピッチで行うSSGでは選手たちはより大きな運動量と運動強度を要求されることが明らかとなっている。

小さなピッチに比べて、より体内の循環系に高い負荷がかかり、このことが心肺機能強化を促している。
 


小ピッチにおける運動量が大ピッチより少なかったのは、インプレーの時間数と関係があるだろう。試合時間中はゴール直後、ファール、スローインなどにより、多くのプレー停止時間があり、大ピッチでは総時間の82%が「インプレー」だったのに対し、小ピッチでは実に68%にその割合が減っていた。

この差を言い換えると、大ピッチの「インプレー」時間は小ピッチよりも1分も長かったこととなる。研究員たちは、ボールがプレーされていない時、選手たちは一般的に動きを止める、そのため、心肺機能への負荷も下がるのであろう、と述べている。

 

一方で、小ピッチでのゲームではより技術力が要求されていた。ゲーム中、インターセプト、ボールコントロール、クリアー、リスタート、シュートの数は、それぞれが全て、大ピッチでの数を上回っており、例えば、インターセプトは小ピッチでは11回起こったのに対し、大ピッチでは6回だけである。よって小さなSSGではスキルを要求される回数がより多くなるということが明らかになっている。

 

この研究結果は、サッカーコーチたちがSSGのピッチサイズを変えることで、トレーニング効果を変えることが可能であることを明示している。エリアを大きくすれば、体力強化が強調され、一方小さなエリアにすることで、技術に焦点が置かれる。

また以前の調査(未訳 英語版はこちら)では、SSGの運動負荷は各ゲーム間のインターバルの違い、そして「声かけ」により影響を受けることが強調されている。

さらに技術力と戦術面の強化は2タッチルールなどの制限を加えることでより重点を置くこともできる。


結論として、この研究により、SSGそのものが大いに有効なトレーニングメニューだということが出来るだろう。SSGは体力強化にも技術力向上そして戦術理解の洗練にも利用することができる。重要なことは、コーチたちが、チームにとって必要なことのために、SSGに変化を持たせ、トレーニングを組み立てることである。(了)

 

Reference:

Casamichana D, Castellano J (2010) Time-motion, heart rate, perceptual and motor behavior demands in small-sided games: Effects of pitch size. Journal of Sports Sciences, DOI:10.1080/02640414.2010.521168

 The Science of Soccer Online: Pitch Size, Fitness and Technical Training

 

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