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サッカー「数字で見るコーナーキック」

 数多くのチームがディフェンシブ(守備的)・そしてオフェンシブ(攻撃的)セットプレーの練習に多くの時間を費やしていることだろう。もちろんセットプレーは重要なゴールチャンスである。特にその中でもコーナーキック(以下CK)のシーンでは、攻撃側チームにとって、プレッシャーのない中でクロスボールを上げることができ、「ゴール前からのシュート」を導く大きなチャンスとなる。そして、この得点が試合の流れすらも変えてしまうこともある。

ところで、CKからの得点とはいったいどれほど難しいのだろう?このような形からいったいどれほどのゴールが決められているのだろう?

驚くことに、これまでこの疑問に対しての確固たるリサーチはほとんどされてこなかったのである。いくつかの出典の違う調査結果が「1点をとるのに必要なCKの平均回数」ということにそれぞれの数値を示しているのが現状だ。そこでSSO(サイエンス・オブ・サッカーオンライン)では独自にCKと得点の分析を行うことにした。

 

 2010年ワールドカップ大会と、同年シーズンのアトランティックコースト協会カレッジサッカー両方の分析から、「CKが得点に結び付く可能性」を解き明かしてみよう。

 分析の最初のステップはFIFAワールドカップ公式ホームページからのデータ抽出である。このホームページでは、全てのゴールの動画を見ることができ、またデータとしてCKの回数も掲載されている。これによると、大会中に合計145ゴールが得点され、627回のCKが蹴られている。そのうち、271回(43%)のCKがそのまま同チーム(攻撃側)選手につながっている。さらにその中で、ペナルティエリア内で、CKのボールをシュートした結果の得点数が9。これは1点が得点されるのに、70回のCKが必要という割合を示す。

 

ところで、「CKからの得点の定義」とはなんだろう。あるグループは、CKが蹴られた後、パスが1度出された場合、フリープレーとしている。またゴールが生まれたプレーの起点がCKだった場合、それが「CKからの得点」という意見もある。たとえば、守備選手がクリアしきれなかったボールがシュートチャンスにつながった場合も、CKによるものとなる、というのである。同様に、ショートコーナーからのクロスボール、そこからのヘディングによる得点も含まれるべきだという。

 ワールドカップ・データ集計に、もし守備選手がクリアしきれなかったボールからの得点(5点)、それにショートコーナーからの得点(2点)を加えた場合、その数は14(**訳者注:16?) ゴールとなり、確率は1点に対して45回のコーナーキックとなる。

 上記方法から、2010年ワールドカップでコーナーキックからの得点は全得点のうち6%-10%ほどを占めるということになる。そして4.5から7試合ごとに1点がコーナーキックにから得点されている。

 そして次のステップはアメリカのカレッジリーグにおけるリサーチである。2010年シーズン、アトランティックコースト連盟所属チームにより合計36試合が行われ、104得点と377回のCKが生み出された。

 このうち、5ゴールがCKからシュート-75回のCKに1点という割合-、そしてさらに4ゴールは守備選手がクリアできなかったところからであり、これを加えると42回のCKで1点が生まれる割合となる。結果、CKからの得点が全得点に占める割合は5-9%で、4-7試合に1点が、「CKからの得点」が生まれる計算となる。

 カレッジレベルでの試合を見てみた理由は、守備選手のレベルがより高ければよりゴールを決めるのは難しくなる、という仮定の確認のためであり、これに基づくと、各CKが得点に結びつく可能性は、ワールドカップの方が低くなるはずである。実際に1試合あたりのゴール数ではそれが見てとれる。カレッジサッカーの2.9に対して2.3ゴールとワールドカップの方がやや低い平均得点数である。ところが、CKからの得点では、ワールドカップのチームとカレッジサッカーチームは驚くほど近い数値とを示している。分析方法にもよるが、ともに70-75回もしくは40-45回のCK回数につき1点という数値に収まっているのである。

 

ここで過去に行われたCKのデータを紹介しよう。ランダムに抽出されたイングランド・プレミアリーグの試合の中でCKが得点になる割合は1:36(テーラー 2005年)。このリサーチでは217回のCKのうち、31%がシュートに結びついた、とも併記している。

またユーロ2008大会(31試合)では313回CKチャンスがあり、そのうち26回(8%)がシュートととなり、5ゴールが生まれた。1:63という割合である(ダン 2009)。このリポートには得点経緯の説明は付記されていないため、CKから直接シュート、そしてゴールとなったものの集計と予想される。

 著者後記:リー・ダンによると、上記ユーロ2008大会におけるデータの集計対象は、コーナーキックを攻撃側選手が先にボールに触った場合、としている。よってこの1:63という数値はワールドカップ・データにおける1:75と比較されるべきものであり、近い数字である。

 

さて、それではCKから得点を挙げるのは、どれほど難しいのだろうか?これらの数値によると、「CKからの得点、の定義にもよるが、非常に難しい」と言えるであろう。得点確率は36-70本に1点というものである。総数の僅か2%にもみたない確率である。ただし、わずれてはいけないのは、他のシュートチャンスにも同様のことが言える、ということである。サッカーの試合では他のプロセスからもそれほどゴールは決まらないのである。シュートの50%が得点となるバスケットボールとは違い、サッカーワールドカップでは、僅か8%のシュートがゴールとなっている。結局「得点すること自体、難しい」のである。そのため、どのチームも、やはり全ての得点チャンスを、確率にとらわれずに活かすことこそが重要なのである。ワールドカップ準決勝で、ドイツに勝利したスペインの唯一のゴールはCKからのヘディングシュートだった。ここでは明らかにこの攻撃によって、試合結果が決まってしまったのである。確かにCKから得点することは難しいことかもしれない。ただそれでも、一つ一つのCKが試合の重要な局面であることに変わりはないのである。(了)

 

References:
Taylor JB, James N, Mellalien SD (2005) Notational analysis of corner kicks in English Premier League soccer. In: Science and Football V: the Proceedings of the Fifth World Congress on Football. T Reilly, D Aranjo & J Cabri (eds), pp 229-234.
Dunn L (2009) A Quantitative Analysis of Corner Kicks During UEFA Euro 2008, Austria & Switzerland, from www.thevideoanalysist.com, http://www.thevideoanalyst.com/pdf/cornerkicks.pdf. Downloaded, 26 November 2010.

Acknowledgement:
A word of thanks to Dr. Don Kirkendall for striking up the conversation about corner kicks and goals scored. Some of the most interesting conversations take place while watching a youth tournament

参照:The Science of Soccer Online: Corner Kicks… By the Numbers

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